Jクラシックとは

J-クラシックとは

J-クラシックという言い方が生まれてから、もう12年近くが経ちました。
立ち上げ当初から関わっていた人間として、J-クラシックのことを少しだけ書いておきます。

J-クラシックとは、広くは日本人演奏家によるクラシック音楽、その中でも特に、伝統的なクラシック音楽の枠を超えた、新しい試みに積極的な若手アーティストたちによるクラシック音楽のことを言います。

従来、クラシック音楽家の活動の中心は、作曲家、それも主に18~19世紀のヨーロッパの作曲家が譜面に書いたものを忠実に再現することでしたが、J-ク ラシックの場合、それだけに縛られず、例えば、ポピュラーの楽曲をクラシック・テイストに編曲したり、同じクラシックでも、違う楽器のための作品を編曲し て演奏したり、長い曲の一部を取り出して演奏するなど、自由なアプローチにより、新しい音楽の楽しみ方を追求します。

スタート当初の代表的なアーティストとしては、ギターの村治佳織、ハープの竹松舞、フルートの高木綾子、ヴァイオリンの幸田聡子、高嶋ちさ子、川井郁子、チェロ の古川展生、カウンター・テナーの米良美一、ピアノの加羽沢美濃などなど。坂本龍一や、葉加瀬太郎などをJ-クラシックに入れる人もい ます。 名称は、1996年に、タワーレコード渋谷店のクラシック売り場が日本人演奏家のコーナーを作りJ-CLASSICALと名づけ、ほぼ同時期に、 日本コロムビアがJ-CLASSICS、ソニーミュージックエンターテインメントがJ-CLASSICALという名称を使い始めました。

J -クラシックは、もとはといえば、レコード会社の事情として生まれたものです。私はその張本人のひとりなので、事情をご説明しておきます。95年頃には、 CDブームも終わり、クラシック・ファンは一通りの名曲のCDは手に入れていました。また、死んでしまった海外の巨匠、例えばカラヤン(指揮者)、ホロ ヴィッツ(ピアニスト)、ルービンシュタイン(ピアニスト)などのCDが1500円程度で手に入るようになり、同じ曲目の新しいCDを出しても、大きな売 上は期待できません。だったら、これだけ日本人アーティストがレベル・アップし、技術で世界に通用するのは当たり前になってきたのだから、彼らと組んで何 か新しいことをやろうと考えたわけです。プロデュースする立場としても、前例のあることをやるのはつまらないというのもあり、既に、いろいろな試みは行っ ていたのですが、会社として真剣に取り組むようになったのは、その頃からでした。

出発はそういった「事情」と、新し いことをやろうという意欲との半々でスタートしたわけですが、一流の技術を持ち、魅力的な個性のあるアーティストが、スタッフとともに、真剣に新しい音楽 を模索したから、J-クラシックは音楽ファンに受け入れられ、定着したのだと思います。

最近は、J-クラシックという呼び方も、むしろ古くなり、日本も外国もなく、もっと自由にクラシック音楽を楽しむようになってきたことは、いいことではないかと思います。
権威で音楽を選ぶのではなく、自分が楽しいと思うものを聴き、演奏する側も、自分のやりたい音楽を追究する。
もちろん、伝統はとても大切で、それがより深い世界への手がかりともなるわけですが。

私自身は、日本人の良さを大切にして、世界中の人を喜ばせられるものを作って行ければと思っています。

(2008年5月記)


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