昨年CDをリリースした、佐村河内守さんの交響曲第1番〈HIROSHIMA〉ですが、昨日大阪で、初めての完全版の演奏会が行われました。
完全版と敢えて言うのは、2年前の夏、京都で全曲初演が行われているのですが、その時は、指揮者の秋山さんが、一部カットしていたのです。なぜカットしたのかと言えば、更に遡ること2008年、広島で開催された「G8議長サミット記念コンサート」で初演が行われた時、全曲では長いので、1,3楽章のみの演奏ということなり(指揮者は秋山さん)、それでも長かったため一部カットし、そのカットを京都でも引き継いだのです。このときのカットについては、別に時間の制限があったわけではないので、正直、秋山さんの姿勢に疑問に感じましたが。
今回の指揮者は、東京初演(1,3楽章のみ)とレコーディングの指揮をつとめてくださった大友直人さんですから、作曲者の意図に忠実に、完全版として演奏されました。
シンフォニーホールを訪れたのは、実は18年ぶり。前回は大江光さんのアルバムの発売記念コンサートでした。演奏は、大阪交響楽団(旧大阪シンフォニカー)。
結論から言えば、素晴らしいコンサートでした。
同時代の作品の演奏で、お客様があれほど熱狂的に拍手し、スタンディングオベーションまで出るのを、私は見たことがありません。いや、同時代の作品に限らず、滅多にないことでしょう。
しかも、特別な演奏会ではなく、いわゆる定期演奏会であり、どちらかというと、クラシックのコアなお客様が集まるコンサートです。そのようなファンも、決して保守的なわけではなく、作品に真の力があれば、新作を待ち望んでいるんだということを、実感する演奏会でもありました。
もうひとつ特筆すべきは、オーケストラの団員の方々も、心から作品に魅了されていたということです。まさに熱演でした。
終演後、久しぶりにお会いしたコンサートマスターの森下幸路さんとお話ししましたが、「すごい作品ですよ。最後のコラールでは、頭が真っ白になって、まるで天国に押し上げられるようでした」と語っていらっしゃいました。
この交響曲第1番は、80分を超える長大な作品であり、とっつきやすくはありませんが、決して分かりにくいわけではありません。終楽章の最後の5分に訪れる、圧倒的な希望の光が最大の魅力だと思いますが、そこに至る苦悩の旅路は、人間の喜怒哀楽が様々に表現されており、現代に生きる私たちの心に、素直に入っている世界です。
今回の演奏会のプログラムに、許光俊さんが、解説を書いていましたが、まさにそれがこの作品の魅力を的確に表現していると思います。
WEBでも読むことができます。→こちら
この曲に興味を持たれた方は、もちろんCDもありますが、ちょうど11月9日の22時からのNHK総合テレビ「情報ライブ ただイマ」の中で、25分ほどの特集が組まれる予定ですので、是非ご覧になってみてください。
ちなみに録音については、以前のブログ記事に、詳しく書きました。
録音の時の映像は、以下から見ることができます。
[youtube http://www.youtube.com/watch?v=iLQUd0hDyZ0]
ひとりでも多くの音楽ファンの方にこの曲を聴いていただきたいですし、様々なオーケストラで演奏されるよう、私も努力していきたいと思います。
都合がつかず、生の会場に居られなかったことが残念でならない。今日聴いただけでも涙が溢れそうになってしまったのだが…。より多くの人に聴いてもらいたい日本人の曲でしょう。生で聴いてからCDで聴いてみます。