今年の大河ドラマ「平清盛」は、例年になく音楽の話題で盛り上がっています。
ひとつは、久しぶりにクラシック作曲家(この言い方が適切かは分かりませんが、普段、劇伴を手掛けていない作曲家という意味です)が手掛けたということ、そしてもうひとつはプログレッシヴ・ロックの名曲「タルカス」のオーケストラ版が使われているという点です。
おかげさまで、2月1日に発売になったサウンドトラックのCDも、順調に売れています。
このテーマ曲の録音に立ち会いましたが、印象的だったのは、かなり限界までテンポを上げ、アグレッシブに演奏をしているNHK交響楽団と指揮の井上道義さんに、作曲の吉松隆さんは、まだ足りないと言い、クラシックではなく、ロックを演奏しているつもりで、知性を捨てて演奏して欲しいとリクエストし、半分やけになって演奏を始めたテイクが、ベストテイクになったというところでした。これぞ清盛の精神ですね。テーマ曲以外を担当している東京フィルと指揮の藤岡幸夫さんは、吉松さんの曲をやり慣れているためか、そのあたりはスムーズに、素晴らしい演奏を繰り広げています。
一方の「タルカス」オケ版ですが、これは、2010年の春に行われたライブ(藤岡幸夫さんと東京フィル)で世界初演されたものです。
初演時に、作曲者のキース・エマーソン氏から絶賛され、打ち上げの時に、エマーソン氏から電話で吉松さんが祝福を受けていたのが、印象的でした。東京フィルのコンマスの荒井英治さんは、自らがプログレファンということもあり、オケも共感に満ちた大熱演。
このアルバムの件は、以下に詳しく書きました。
タルカスの記事
大河ドラマでは、この音源ではなく、新たにスタジオで録り直したものを使用しています。サントラのCDには、この「タルカス」は収録されていません。
なぜなら、吉松さんのオリジナル作品だけで、1枚に収まりきらないくらいの音楽があるということ、そしてこのオケ版「タルカス」に関しては、既にCDがあり、そちらの方が熱演であること、が理由です。
とはいえ、恐らく秋に出すサントラ第2弾には、収録することになると思いますが。
今回、「タルカス」以外に、もう1曲、吉松さんの曲ですが、大河のために書かれたものではない作品が使われています。それは「5月の夢の歌」というピアノ曲です。
吉松さんが「平清盛」の音楽を担当することになったのは、番組プロデューサーが、「タルカス」と「プレイアデス舞曲集」を聴いたのがきっかけだそうで、そのプロデューサーの希望で「5月の夢の歌」が使われているのだと思います。「5月の夢の歌」自体は、「プレイアデス舞曲集」ではありませんが、「プレイアデス舞曲集」第2集に入っているのです。これは、吉松さんに確認したわけではないので、私の推測ですが。
「プレイアデス舞曲集」も、名盤ですので、大河ドラマで吉松さんに興味を持った方は、是非聴いてみてください。